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横浜地方裁判所 昭和27年(ワ)922号 判決 1954年2月25日

横浜市西区杉山町四丁目百四十七番地

原告

小塚峯吉

右訴訟代理人弁護士

吉井元市

被告

右代表者法務大臣

犬養健

右指定代理人

武藤英一

小林忠之

関川朋衞

岩村弘雄

右当事者間の土地所有権確認並びに登記抹消手続請求事件について当裁判所は昭和二十九年二月十一日終結した口頭弁論に基き次の通り判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告は原告に対し横浜市西区藤棚町一丁目二十五番地ノ四宅地三十一坪一合八勺が原告の所有であることを確認し、且つ被告が右土地に付き、昭和二十三年五月二十七日横浜地方法務局受附第七八一〇号をもつてなした物納による所有権取得登記の抹消登記手続をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め

請求の原因として、

(一)  原告は横浜市西区藤棚町一丁目二十五番宅地二百十一坪五合及び同所二十六番宅地四十坪二勺を所有していたが、昭和二十二年二月十三日右二筆の土地は合筆して二十五番宅地二百五十一坪五合二勺となつた。

(二)  原告は右二十五番の地積に誤謬があることを発見し、昭和二十一年十一月九日横浜税務署長に対して右二十五番の地積二百五十一坪五合二勺は二百八十二坪七合の誤りであることの訂正を申請したところ、昭和二十二年七月二十四日になつて右誤謬訂正は許可された。

(三)  次で昭和二十三年二月二十六日原告は横浜税務署長に対し右二十五番の宅地を地積二百五十一坪五合二勺及び三十一坪一合八勺の二筆として分筆する旨の届出をなし、結局二十五番の一宅地二百五十一坪五合二勺及び二十五番の四宅地三十一坪一合八勺(以下本件宅地と言う)の二筆に分筆された。

(四)  原告は昭和二十二年二月十五日右二十五番ノ一の土地を財産税の物納として納付することの許可を横浜税務署長に申請し、これは昭和二十三年五月二十七日許可されて納付を完了したが、右二十五番ノ四の本件宅地は物納申請をしていないから原告の所有には何等変更がないものである。

(五)  然るに被告は原告が本件宅地を財産税に対する物納として納付する旨の許可申請をし、横浜税務署長もこれが許可処分をしたものとして、昭和二十三年五月二十七日横浜地方法務局受附第七八一〇号をもつて右土地の所有権取得登記をし、所有権が自己にありと主張する。しかし、前記のように原告は右土地を物納したことはないのであるから、被告の右登記は無効である。

右理由により原告は前記二十五番の四の宅地の所有権確認並びに被告の右土地所有権取得登記の抹消登記手続を求めるため本訴に及んだ。と陳述し、立証として甲第一号証、第二号号証の一、二、第三乃至第八号証を提出し、証人江成忠雄、同小塚徳松、同岩崎貞三の各証言を援用し、乙号各証の成立はいずれも認めると述べた。

被告指定代理人は主文同旨の判決を求め、

答弁として

原告の請求原因事実中

(一)  は認める(但しその登記は昭和二十六年六月十四日である)

(二)  は認める(但しその登記は右(一)の登記と同日)

(三)  は原告主張のような分筆の事実は認めるが、分筆の日時は昭和二十三年三月一日でその登記は昭和二十六年六月十四日である。

(四)  は物納申請の日時は認めるが他は否認する。原告が物納を申請した土地は前記合筆前の表示二十五番二百十一坪五合(実測二百四十二坪六合八勺)及び二十六番四十坪二勺であり、この申請が横浜税務署長によつて許可されその許可書が原告に送達されたのは昭和二十二年三月二十四日頃であり、遅くとも右同日より同年六月二十六日までの間である。

(五)  は原告主張の登記がなされたこと、原告の物納により被告が本件土地につき所有権を主張していることは認めるが、他の主張は争う。と述べ、立証として、乙第一号証の一乃至四、第二、第三号証の各一、二、第四、第五号証の各一乃至三を提出し、証人須崎正雄の証言を援用し、甲第八号証の成立は知らないが、他の甲号各証はいずれもその成立を認める。と述べた。

理由

原告が昭和二十二年二月十三日その所有に係る横浜市西区藤棚町一丁目二十五番宅地二百十一坪五合及び同所二十六番宅地四十坪二勺の二筆の土地を合筆して同所二十五番宅地二百五十一坪五合二勺としたこと、原告が右二十五番宅地の地積二百五十一坪五合二勺に誤謬があることを発見して昭和二十一年十一月九日横浜税務署長に右二十五番の地積は二百八十二坪七合の誤りであることの訂正を申請したところ、翌二十二年七月二十四日に至つて右誤謬が訂正されたこと、及び右二十五番の宅地が二十五番ノ一地積二百五十一坪五合二勺及び二十五番ノ四地積三十一坪一合八勺の二筆に分筆されたことについては当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第四号証によれば、右の分筆届がなされたのは昭和二十三年二月二十六日であること、又成立に争いのない甲第一号証及び同第二号証の一によれば、右の分筆がなされたのは同年三月一日であつたことがそれぞれ認められる。原告は昭和二十二年二月十五日横浜税務署長に対して右二十五番ノ一の土地を物納することを申請したと主張するが、右申請当時に於てはまだ二十五番ノ一の地番はなく、しかも、成立に争いのない乙第一号証の二(財産税課税価格申告総不動産の内訳書)乙第一号証の四(物納財産目録)によれば単に藤棚町一の二五(二一一坪六五)同一の二六(四〇坪〇二)と記載されているに過ぎず他に反証のない限り本件宅地は右二十五番の土地の一部として物納を申請したものと認めるの外はない。(この点に関する証人小塚徳松の証言は措信しがたい)又成立に争のない乙第二号証の一、二、乙第三号証の二、乙第四号証の一並びに証人須崎正雄の証言を綜合すると、原告の右物納申請は遅くとも、昭和二十二年六月二十六日には税務署長によつて許可されてその許可書が原告に送達されたことが認められ(右認定に反する証人小塚徳松の証言は信用しがたい。)他にこの認定を左右するに足る証拠はない。従つて原告の右物納申請が許可されその許可書が原告に送達された日以後本件宅地は被告の所有に帰したものと言うべく、これに基いて被告のなした前記所有権取得登記はもとより有効であつて、被告に対し本件土地の所有権確認並に所有権取得登記の抹消手続を求める原告の請求は失当である。

よつて原告の請求を棄却し、訴訟費用について民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 地京武人)

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